長大トンネルの建設には、土木、建設、施設(機械・電気・システム制御)等多くの技術分野の人達が関わる。その基本方針は基本設計計画にまとめられる。とりわけ換気方式の基本設計計画は、土木、建設、施設のすべてに関与する最も重要なものである。

 恵那山トンネル(一期線)は1チューブ2車線対面通行トンネルであり、CO濃度の許容限界濃度を100~150ppm、煤煙(VI)の限界透過率を40%とした。

 検討段階では、換気方式として縦流式、横流式、半横流式などの6方式が比較検討された。その内、立坑縦流式と横流式が8000m以上のトンネルに適用可能と判断された。

 これら2つの換気方式案を比較し、火災時の安全性と換気の信頼性の優れている横流換気方式案が建設費の順位で優る立坑縦流換気方式案を抑えて最終的に選定された。この最終判断には、それまでの国内の関門トンネル、天王山トンネルやモンブラントンネルが横流換気方式であった事が参考にされたと考えられる。

立坑縦流換気方式と横流換気方式の比較

    立杭縦流換気方式 横流換気方式

断面積 ダクトを要しないので
断面小
送排2ダクトを要するので
断面大
立坑数 8本 4本

換気の信頼性
安全性 防災設備に一考を要する 防災設備は容易

 横流換気方式のための送排風機を設置する換気所は、両坑口の他、送排気坑として立坑と斜坑が用意された。立坑と斜坑の長さはそれぞれ620m、1420mとなり、それぞれに用意された送風機と排風機の容量(kW)は次表のようになる。 

恵那山トンネルの送排風機容量

西坑口立坑地下斜坑地下東坑口
排風機2×485kW2×1025 kW2×1155 kW2×795 kW
送風機2×345 kW2×990 kW2×1215 kW2×855 kW

 当時の車両排出ガス(CO,煤煙)は現在より大きいことを考慮しなければならないが、総換気電力容量が1万kWを越え、13,730kWとなっていることには驚かされる。(つづく)

参考文献:

[1] 恵那山トンネル工事誌P673「第3編管理施設及び管理体制 第一章管理施設 1.換気設備」

[2] (公)高速道路調査会 高速道路の施設技術史P341「中央道の自動車道のトンネル換気 恵那山トンネル1期線」

[3]  三菱電機技報Vol49,No.12,P767「道路トンネル用電機特集」昭和50年(1975)12月「高速道路トンネル換気設備用電動機と制御方式」